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運転開始から40年を超えた高経年原発である関西電力の美浜原発3号機(福井県美浜町、出力82・6万キロワット)が23日に再稼働した。
東京電力福島第1原発事故後に「原則40年、最長で延長20年」の運転年限ルールが定められて以来、初めて実現した40年超原発の再稼働だ。順調に進めば29日から送電を始め、7月下旬に営業運転に移る。
国内には33基の原発が存在するが、これまでの再稼働は9基のみで、平成30年の4基を最後に新たな再稼働は途絶えていた。
昭和51年に運転を開始した美浜3号機の現役復帰で、稼働原発が2桁の大台に乗ることになった。電力の安定供給と「パリ協定」で求められる温室効果ガスの排出削減に資する前進である。
原子力規制委員会の審査に合格していても地元の同意が得られず再稼働に至っていない日本原子力発電の東海第2原発(茨城県東海村)の例もある。美浜3号機の再稼働を可能にした美浜町と福井県の前向きの対応を是としたい。
原発の再稼働の遅れと火力発電縮小の動きなどが相まって国内の電力事情は切迫している。経済産業省によると関西エリアの最大需要時の電力供給予備率は、今年8月に3・8%、来年2月には3%まで低下する見通しだ。
こうした状況下でベース電源を支える美浜3号機の再稼働は朗報だが、同機はテロ対策施設の設置工事が遅れている。10月25日の完成期限に間に合わないため、その後の運転停止が避けられないのは困ったことだ。工事が長引き、今冬のように大雪と悪天候が続くと広域停電のリスクが高まる。
テロ対策施設は、完成期限を過ぎるとその翌日から、原発のリスクが一気に上昇するものではないはずだ。国は電力不足に端を発する大停電の現実的なリスクと比較して、硬直的な規制を見直すべきではないか。
高経年原発の運転延長は、米国やフランスでも進められている既存原発の活用策だ。福島事故後、原発の新増設が難しくなっている日本では、とりわけ重要な取り組みだ。先頭に立つことになった関電には、その自覚が求められる。不祥事の再発などはあってはならないことである。
政府は、現在改定中の「エネルギー基本計画」に高経年原発の活用を明記すべきである。
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2021年6月24日付産経新聞【主張】を転載しています